ちょっと前に読んだ本

れんげ荘

れんげ荘

 広告代理店で長年働いて来た独身40代女性が、突然会社を辞めて、溜めまくった貯金を毎月細々と使いながら、ボロアパートで質素にシンプルに暮らすお話。これ、出張に行った時、機内の新聞広告で見た途端、「買わなきゃ」と思って、即買いに行った。それくらい好みの筋書き。

 人は自分にないものに惹かれると言うが、幼い頃から「質素」とういものに憧れがあった。うちは母がアンチストイックな人だったので、買い物は楽しみの一つで、子供である私もたくさんの物に囲まれて育ったほうだと思う。小学校5年生の時、仲の良かった友達の家は正反対の正にストイックで、その子は少しの物を大事に使っていた。ケシゴムなら、ケシゴム1個。ぬいぐるみなら、クマのぬいぐるみが1つ。洋服も流行のデザインの服を少数、大事に着回していた。見る人によっては質素すぎて不憫と思うかもしれない。でも、私は彼女の部屋のすっきりとした学習机や、物が詰まっていない引き出しを見て「羨ましい」と思ったのを憶えている。「美しい」と思った記憶が鮮明にある。

 この主人公の暮らしもまさにそんな感じ。「質素で美しい」。はい、自分は母そっくりのアンチストイックに成長してしまいました。だからこそ、憧れは今も健在です。